2人が本棚に入れています
本棚に追加
プロローグ
たぶん、私達はお互いの世界だけを視ていたのだと思う。人を遠ざけて、傷つくことや傷つけることから逃げるあまりに、他人と触れ合うことをしなかった。
でもね、優雅君。あなたはまだ遅くないはず。あなたならまだ、選択できる位置にいると思うの。
最後に彼女はそう言った。
「福与、ただいま」
鵺野町の外れにある砂漠地帯の中央で、枯れることのない一輪の彼岸花の前で、手を合わせて続ける。
「やっと、やっと見つけたんだ。吸呪姫を、人間に戻す方法を」
最初のコメントを投稿しよう!