プロローグ

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プロローグ

 たぶん、私達はお互いの世界だけを視ていたのだと思う。人を遠ざけて、傷つくことや傷つけることから逃げるあまりに、他人と触れ合うことをしなかった。  でもね、優雅君。あなたはまだ遅くないはず。あなたならまだ、選択できる位置にいると思うの。  最後に彼女はそう言った。 「福与、ただいま」  鵺野町の外れにある砂漠地帯の中央で、枯れることのない一輪の彼岸花の前で、手を合わせて続ける。 「やっと、やっと見つけたんだ。吸呪姫を、人間に戻す方法を」  
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