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つたが彫られた茶色い木のドアを開けると、しっとりと森のにおいがした。中が一段低くなったカウンターから、女の先生が顔を半分のぞかせている。先生はこっちをちらりと見て、またすぐに目を下に落とした。わたしは本だなが何列も並んでいるところをどんどん進んで、行きどまりでリュックをおろした。
本に囲まれているとほっとする。あの先生はわたしにかまわないと決めてくれたみたいだけど、やっぱり、だれもあまり近くにいてほしくない。
昨日読みかけの本は、「ま」のたなにしまわないといけなかったけど、だれにも借りられたくなくて、「ほ」のすみっこにまぎれこませてあった。何時間読んでいたんだろう。少しむずかしい漢字が出てくるようになって、わたしはうとうとしてしまったらしい。
なにかふわふわしたものがわたしの鼻先をなでている。
「転校生さん。この本は面白い?」
大人のホッキョクグマが、わたしの顔をのぞきこんでいた。おおいかぶさるくらいのクマが、日本語をしゃべっているのに、怖がりもびっくりもしなかった。
これがしろくま先生との出会いだった。
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