17人が本棚に入れています
本棚に追加
自分で自分の動きが止められない、というようなことを叫ぶのだ。
「いつから続けているんだ」
「かれこれ25年ちかく」
「休みなしか? 止まらないのか」
「少なくともあいつには無理。その資格も権利もないもの」
私は絶句した。
犯行直後から、或いは犯人の男が留置所に入ってからずっとこの状態、ということになる。
男の顔は性的な快感に酔っているように見えるものの、恐怖と苦痛の方がはるかに大きいようだった。
男の局部は、血塗れであった。
皮膚が剥け、中身が摩擦でぼろぼろになっても、腰を動かしている。
出血したままで行為を続けているせいだろう、腹、内腿まで真っ赤に染まり、下になっている女も男の血で赤くなっている。
「君はつらくないのか?」
女は左右に首を振ると、私のより長い指をパチンと鳴らした。
たちまち男の下にいる女だけ、風呂上りのようにまっさらな状態になった。
「だってあれは私じゃなくて、あいつに罰を与えるための人形だもの」
女はまた、指を鳴らした。
予想もしない出来事に会うと、人間は萎縮する。
私は息を飲んだまま動けなかった。
たぶん犯人の男もそうだっただろう。
男に組み敷かれていた女の姿が、みるみる黒い猫に変わっていって、ついには虎やライオンほどの大きさになった。
それでも腰を動かすのをやめることが出来ない男に、黒猫は下から強烈なフックをお見舞いする。
男は頬を爪で裂かれて、横に吹っ飛んだ。
猫はその場で身を捩ると、男に飛びかかり首筋に噛み付いた。
最初のコメントを投稿しよう!