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水
梱包を解かれた私が見たのは、目の前に立つ男女だった。
工場で見ていた人間たちよりも少し若いように見える。
私と並行にテーブルの長辺が置かれている。私と反対側の辺に椅子が二つ、私から見て右側に椅子が一つ並べられていた。
広さや、置いてあるものから推測するに、ここはダイニングキッチンのようだった。
「こんなことになるとはね」
肩を上げて息を吸い込んだ女を、男が咎める。
「おい」
女は男に構わず、思い切り息を吐き出した。
「私だって分かってる。でも家の中でため息くらい、許してよ」
「ユウタよりも先に、お前が使った方がいいんじゃないか?」
男が私を指差し、揶揄するように笑った。
「冗談やめて!」
女は金切り声を出す。心底嫌そうな表情を浮かべたあと、私をじろりと睨んだ。
「君を不快にさせたなら謝るよ。でも、一旦冷静になった方がいい。冗談抜きで。今後の話し合いを有意義にするためにもさ。ほら、ユウタが帰ってくるまであと二十分もない。俺もやるから」
男が、私の「胸」の真ん中に付いている半球に手を当てる。半球がぼんやりと明るくなる。そこから伝わるものが電力になり、電力が冷気に変化した。「口」から入ってくる空気が、急激に冷やされる。「足」の方から、ぴちゃんと音がした。
私の内部で水ができはじめたのだ。
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