正否

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正否

 左側からバタンという扉が閉まる音がした。続けて声が聞こえる。 「ただいま! あれ? おきゃくさん?」  私の目の前で、ちいさな人間(ヒト)が首を傾げた。多分これがユウタなのだろう。 「違うよ。まずは手を洗って、ランドセルをおろしておいで。そしたら、こっちでおやつ食べよ?」  女が優しい声色で言うと、ユウタは「うんっ」と返事をして、小走りで右側に消えていった。そちら側にもドアがあるらしい。  女は男を見ると、肩を落とした。 「説明はお願いね」  男は神妙な面持ちでゆっくり頷いた。 「分かった。やってみるよ」  パタパタという足音が近づいてくる。二人は瞬時に笑みを貼り付けた。 「今日のおやつはなに?」  ユウタが女を見る。 「プリンとゼリー、どっちがいい? お母さん、張り切ってどっちも作っちゃった」  ユウタは、ぱあっと顔を輝かせた。 「プリン! でもおたんじょう日でもないのになんで? あ、もしかして」  ユウタが私を見る。 「この人のかんげい会?」  女が憤怒の表情を浮かべた。 「歓迎なんておぞましい」  低く呟くと、男が気遣わしげに女を見た。  気づいた女が笑顔を取り繕う。 「プリン取ってくるね。待ってて」  女が私の背後に消えていった。私の後ろがキッチンスペースになっていて、冷蔵庫(レーゾーコ)があるのだと思われる。  ユウタは私にぺこりと一礼すると、男の隣、つまり私と向き合う位置の椅子に、よじ登るようにして座った。
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