正否

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「あのな、ユウタ。話したいことがある」  男が重い口を開いた。ユウタは彼をきょとんとした顔で見返す。 「これについてだ」  男はユウタを見つめたまま、私を指差した。ユウタは訳も分からず頷いた。 「先生から聞いたんだけど、教室でよく泣くらしいな。それだけじゃない。『ぼくなんかにはムリ』『つらい、いやだ』と、ネガティブな発言を繰り返しているとか」  ユウタが何かを言いかけたが、男は構わずに続けた。 「恥ずかしいと思わないのか」  冷静さを保とうとはしているが、だんだんと語気が強くなっていた。  ユウタは完全に口をつぐんだ。男から目を逸らす。 「何か言ってみろよ、おい。ユウタ!」  男がテーブルに置いた拳を震わせた。  トレーにプリンを三つ載せて戻ってきた女が、男の前にプリンが載った皿を置いた。 「落ち着いて」  スプーンを手渡しながら女が言う。 「すまん」  男はスプーンを受け取り、深呼吸した。ユウタに向き直る。 「ネガティブなのはいけないことだ、っていうのは知ってるよな?」  諭すような口調だった。ユウタが恐々(こわごわ)頷く。 「じゃあなんで学校で泣いた? なんで人前で弱音を吐いた?」  ユウタの目にみるみる涙が溜まっていくが、流すまいとこらえているようだった。  女が無言でテーブルにプリンを置き、ユウタの隣の椅子に座った。ユウタの前にプリンを押しやる。 「だって、苦しくて。がまんしたら、どうにかなっちゃいそうな気がしたから」  ユウタは震え声だ。 「そうか」  男はそう言ったきり、目を伏せた。プリンを一口食べる。ユウタも、涙目のまま、スプーンでプリンを崩し始めた。
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