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ブライダルリングを見に、彼とやってきたのはティファニー。
ショーケースの中で室内の照明を反射したティファニーダイヤが煌めいている。他のダイヤとは一線を隔すその輝きは思わず見惚れるほど美しい。
店内に足を踏み入れた私たちにさりげなく近づき、強引さのかけらもなく、爽やかに商品やティファニーブランドについて説明する店員の対応はスマートで、好感が持てる。
実際、プロとは言え大したものだ。どんな客にも動じることなく、冷静に自分の仕事をこなす手腕は感心するほど。そして、幾分申し訳なくも思う。
「指輪において1㎜の違いは大きいんです。どうぞおつけ下さい。印象がかなり変わります。」
白い手袋をはめた男性店員が指輪の試着を勧めてくれる。
「ほんとだ。全然違う!」
はしゃぐ私。
「おお!桃太郎系のトマトとソプラノトマトぐらいの違いがあるんだなぁ。」
よく分からない例えをしてくる彼。
「ティファニーダイヤは他のダイヤとカットの仕方が異なるので、煌めきが違うんですよ。」にこやかに微笑みながら、ダイヤの説明をする店員。
「本当に素敵!」
見惚れる私。
「キャロルセブンとアイコぐらい粒が違うってことだな。」
よく分からない例えをしてくる彼。
ピントがずれた会話。
正直、店員には呆れられているのではないかと思ったけれど、意外にも、ティファニーブランドに一途な店員とトマトに一途な彼は、通じるものがあったらしい。スーツをサラリと着こなすティファニー店員とTシャツに短パン姿の彼との間で楽しそうに会話が弾んでおり、ホッとした。
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