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深夜──
疲れているのに寝付けずにいた僕は水でも飲もうかと1階へ降りた。
だが何か変だ。
誰もいない室内に明かりを感じる。
そっとリビングを覗き見てみると消音でテレビをつけている男の姿が目に飛び込んできた。
「なんだ……お前……」
「あれれ? 初日にバレちゃった」
新品のソファーに汚いズボンで座る男。テーブルの上には食べかけのコンビニ弁当が広げられている。
「お前か、ゴミの犯人は?」
「組み立ててる時から狙ってたんだよね~。お宅、金持ちっしょ?」
一気に五臓六腑が熱くなり目も耳も赤くなっていたと思う。奥歯をギリリと噛み締め僕はカウンターに置いてあったドライバーを手に取った。
バカな男だ。僕が怯えていると勘違いしているのか男は背を向けてペラペラと話している。
僕は男の背に何の躊躇いも無くドライバーを振り下ろした。
「僕の、マイホームだ、土足で、勝手に、入るな!」
薄明かりの部屋で僕は大量の返り血を浴びている。
「あなた? なんだか物音がして──きゃあ!」
電気のスイッチを入れた妻が叫ぶ。
「血塗れ……え、だ、誰なの? その人……」
僕の足元に転がる男の事を言っているようだ。僕だって誰だか知らない。
「救急車? まずは警察に連絡を──」
「しなくていい」
「え?」
1人殺すも2人殺すも同じか。
「僕はね──味付けはしょっぱい方が好きなんだよ!」
新築のフローリングが早速凹む。
「いっ───」
「飲み会で酔っ払ったお前の介抱を部長に任されて──僕も酔ってたからつい一夜を共にしてしまった。今でも後悔してる! くそくそくそっ!」
「やめ──」
「最初から僕はずっと我慢してたんだ!」
「…………」
でも、これでようやく我慢しなくて済みそうだ。僕はこのマイホームで第二の人生をスタートさせる。
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