3人が本棚に入れています
本棚に追加
“ガチャ──”
「うわぁ、良い香りだなぁ」
「本当ね、杉の良い香りがするわ」
扉を開くと新築の木の良い香りが漂ってきた。木材にも色々こだわった甲斐がある。
「オープンキッチン! やっとあの狭い台所から解放されると思うと早くこのキッチンに立ちたいわ」
「ははは。そうだ、寝室を見に行こう」
「ええ」
2階に上がると部屋が3部屋ある。
1つは夫婦の寝室。残り2つは未来の子どもたちの為の部屋だ。
「寝室はこっちね」
「僕は向こうの部屋を見てくるよ」
妻は寝室を見に行き僕は子ども部屋を見に行った。
すると──
「きゃあ! あ、あなた!」
「どうしたんだ!」
妻に呼ばれ急いで寝室へと向かう。
「な、なんだよ、これ───」
「わからない、大工さんの……かしら?」
僕たちの寝室予定となる部屋には大量のゴミが散乱していた。それも飲み物や食べ物のゴミばかり。溜め込まれた様子から1回2回じゃない長期間のゴミと思われる。
「ちょっと建築業者に電話してくる!」
「え、ええ──お願い」
新築の家に、それも寝室に放置されたゴミを見て妻はショックを隠せない様子だ。
─────
───
──
「食事はみんな外で食べてたって……」
「ええっ!? じゃあこれ一体……」
「わからない。でも調べてはくれるって」
ふざけるな。
このマイホームのために僕がどれだけ頑張ったと思ってるんだ──
タバコをやめ、ギャンブルをやめ、スポーツカーが趣味だったのに車を軽自動車に乗り換えた。一戸建ての為にと妻にお小遣いを減らされ、本当は外食で好きな物を食べたいのに妻の味気ない弁当で我慢してきた。
「───今日はこれを片付けて帰ろう」
「そ、そうね。あなた大丈夫?」
「ああ。大丈夫だ」
全然大丈夫じゃない。ぶつけようのない怒りが僕の腹の中でふつふつと沸き上がるのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!