初入部?

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初入部?

体育館での入学式典、部活のプロモーションが終了すると一旦、クラスごとに分かれて、連絡事項を含めたホームルームの後、各部活動へ移動という事になっている。 宮原は松下と一緒に教室を後にして、サッカー部があるグラウンドへ向かう。 校舎の裏にあるグラウンドに向かう途中、去年の夏休みの終わりに当時のクラスメイトと一緒に歩いた長い渡り廊下を歩く。 『懐かしいな、この廊下』 一歩一歩踏みしめながら歩くと、初めて沢海と話をした場所に差し掛かる。 『蒼学サッカー部の部員として漸く、念願のこの場所に立てる!』 あの日、自分に誓った目指すべき目標。 宮原は改めて感慨深く、そして抑え切れない衝動に自然と部室へ向かう足取りが軽くなっていく。 サッカー部の部室に到着すると既に30人程の新入生が入り口前に待機していた。 入り口前には何やら用紙が貼られてあり、その用紙に書かれてある内容が物議を醸し出しているようだ。 「何? どうしたの?」 高校1年生で身長が既に186cmもある松下が、他の生徒の頭の上から聞いてくる。 松下がその用紙を読み上げると「新入部員希望者は走力テストをするので、各自ウエアに着替えて13時に部室前に集合」と書かれてある。 松下は「マジ? 今日からトレーニングかよ…」と 言葉では厭ってはいるが、口元が笑っている。 多分、松下は大方この予想はついていたのであろう。 同じように宮原も何ら動揺している様子はない。 それどころか宮原は「やっぱり、初日からスパイクを履けないよなぁ…」と肩を落としていた。 「着替えは部室使っても良いんだよな?」 宮下は鞄の中のランニングシューズを確認するとドアをノックした。 「失礼しまーす!」 「失礼します!」 既に部室内には新入部員の希望者であろう、数名がウエアに着替えをしていた。 宮原はそのウエアに書かれている文字に目を這わす。 『こ、う、な、ん…江南中学? ………あの、県選抜の?』 宮原は黙々と着替える部員のウエアやボストンバックをちらりと横目で見渡してみると、やはり選手権で名を馳せた中学校の出身者が多く、中にはJ リーグのジュニアユース出身のウエアさえ見える。 ふ、と気になって隣に立っている松下へ視線を上げる。 「ねぇ、あのさ。 松下って出身中学は何処?」 松下は気にしてないように「地元の中学だよ」と笑うが、ボストンバックから取り出したウエアはJリーグのジュニアユースの物だった。 「……そういう事ね」 宮原は中学校時代に所属するチームのレベルの差を感じながら、テーブルの上に乱暴にボストンバックを置き、名前が入っていないウエアに着替える。 『絶対、負けねぇ…… 勝負はこれからだ!』 宮原はヘッドバンドを付け、少し長めの前髪を分けて視界を広げた。
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