誰のせいかと言われたら。

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高2の夏、弟が出来た。 弟と言っても、歳が17離れた実の弟、という訳ではない。 親同士の再婚、という少女漫画や恋愛ドラマではフラグが立ちがちなアレだ。 年齢は1つ下の高1だと言うから、最初に話を聞いたときはあぁ、男(弟)で良かったなぁ、となんとなく安堵の気持ちを覚えたりしたものだ。 だって急に顔も知らない女子高生と今日から兄妹だから1つ屋根の下ね♪なんて言われても、そんなものいくらなんでも気まずい。 自分は至って健全な男子高校生だと思うが、それをラッキーと思えるほど図太い神経も持ち合わせていなかった。 兄弟のいなかった俺は、母に再婚を告げられた時から、義理でも弟が出来ることがちょっと嬉しかったし、歳が近いなら話も合うだろうし、いいヤツなら友達が増えるな、くらいの気持ちでいた。 そして初めての顔合わせの日。 俺は生まれて初めて、人の顔に見蕩れるという経験をした。 もう、その辺のアイドルとか俳優とか、なんなら女優までぶっちぎりそうな造形美。 え、男?いや日本人? いや、むしろ人間?? 母の再婚相手で、新しく父となる智之(ともゆき)さんも、彫りが深くて精悍な顔つきのかなりダンディなイケメンだと思うが、もうなんというか、彼は舞い降りた天使かってくらい。 陶器みたいな白く透き通る肌に、日本人離れしたぱっちりした二重瞼の大きな目、アンバー色の瞳に長い睫毛。 すっと通った鼻筋に、果物みたいに瑞々しいぷるんとした形のよい唇。 色素の薄いさらさらの猫っ毛は真っ直ぐなストレートで、絶妙に彼の容姿に彩りを添えていた。 ここは間違いなく日本なのに、彼の背景だけヨーロッパだかなんだかの教会や舞い上がる白い羽なんかが見えそうなくらいだ。 …こんな人間、ほんとにいるんだな。 思わず凝視してしまう俺に、智之さんが 「ほら凛。挨拶しなさい。」 と彼を促した。 凛。 中性的な名前も、これだけの美形なら恐ろしいくらいしっくりくるもんだ。 「…。」 彼はその透き通るような瞳で俺の方に小さく視線を移し、 「…よろしくお願いします。」 とだけ呟くように言った。 その少しアルトで甘く涼しげな声。 美形は声まで美形なのか。 こちらこそよろしくお願いします、なんて返しながら、この子が弟って凄いな俺…、なんてただひたすら感動していた。
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