第1話 初恋―晶斗

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第1話 初恋―晶斗

何の取柄もない。 僕は自分で自分のことをそう評価できるほどには、自分のことを冷静に判断できる能力だけはあるみたいだった。勉強の成績は学年で言うと中の上くらいで、スポーツもできないわけではないけど出来るわけでもなくて、我ながら"平均値の男"だなと思って生きている。 「うーっす。」 「今日もさえないな、晶(アキ)は。」 幼稚園のころから親より顔を見合わせている友達の修二(シュウジ)も、僕に言わせれば平均値の男なので僕にさえないなんて言葉をかける立場ではない。 まあもっとも彼も自分で自分のことを"冴える男"と思っていないとは思うけど。 流行りのスクールカーストで表すなら、やっぱり僕らは平均だ。 よく少女漫画の主人公になっている、スポーツが出来る生徒会長みたいなやつには言わずもがなかなうはずもないし、かといってガキ大将みたいなやつにいじられるタイプでもない。 そんな声のかけやすい気軽さみたいなところから、女友達は少なくなかったけど、でもかといってモテているわけもなかった。 「ほら~お前ら席につけ~。」 主人公になれない僕らの担任は、やっぱり冴えなかった。 容姿には全く気をつかっていない、いかにも"理系"タイプのくせに担当は現代国語というギャップはあったけど、それはよくいう"萌える"ようなギャップでないことは、女子からの人気を見てみたら確かだった。 僕の周りをとりまくすべての環境があまり冴えないことも、全部僕がさえないせいだという事は自覚していたけど、それでも僕はこの普通の日常を気に入っている。 僕はいつもの冴えない声を聞きながら、今日1日の始まりを感じた。
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