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全く興味がない本だって、彼女と同じ空間にいられると思ったら少しは読むことが出来たから、僕の最近読んだ本の数は人生で読んだ本の数で通算すると倍くらになるかもしれない。
内容はあまり頭に入っていないのかもしれないけど、ずっと見ているのもはあまりにも気持ちが悪いから、僕は本を読みつつ、いつか話しかけられないかと機会を伺っていた。
「アキ、ああいう子が好きなんだ。」
「なんだ、そういうことか。」
僕の平穏で、でも何となく色づいた日常はそう長くは続かなかった。
僕が彼女を見ている間にいつの間にか図書館に入ってきたのは、見飽きた顔2つだった。
「そういうことってなんだよ。」
「わかったから。照れんなって。」
「てかキモくない?話しかけなよ。」
このデリカシーのない女・天音(アマネ)は、シュウと同じく腐れ縁で育ってきた幼馴染だ。
平均値の僕たちとは違って天音は、他の男から言わせれば"幼馴染なのがうらやましい"程度には可愛いらしいが、僕にとってはただのデリカシーのない女でしかない。
一番ばれたくない2人にばれてしまった。
まさかこんなに早くばれるとは思っていなかったけど、女のカンというのはやっぱりすごいらしい。シュウから最近僕が図書館によく行くという話を聞いただけで、天音は僕に好きな子が出来たんだと言い始めたそうだ。
「あの子、5組の美玖莉(ミクリ)ちゃんだよね?
私体育一緒だ。」
情けないことに、僕が知らなかった彼女の名前をデリカシーない女は知っていた。
名札の色が青色だから、僕と同学年だという事までは分かっていたけど、くしくもこの女から名前を聞くことになるなんて想像もしていなかった。悔しい想いのまま何も言えずに天音をにらむと、やつは悪魔のように笑った。
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