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「おすすめのメシ屋が有るんですよ」
そう言われて付いて行った先は、今まで一度も入った事のない定食屋だった。こじんまりとしていて、店構えから昔ながらの雰囲気が漂っている。
「いらっしゃいませー」
引き戸を開けて店内を見渡すと、壁には様々なチラシが貼られていて、各々のメニューだと気付く。
ワンコインで食べられる定食が売りなようで、その種類たるや目を疑うものばかり。
刺身定食やチキン南蛮定食、生姜焼き、サバ味噌、唐揚げ、ハンバーグと何をオーダーしようか迷うほどだ。
「聡ちゃん、いつもありがとねぇ。空いてる席、何処でも良いよ〜?」
愛想の良いおばちゃん店員さんに挨拶され、瀬野くんがどうやらここの常連さんだと察する。
「……このお店、よく来るの?」
常連さんと分かったけれど、とりあえず当たり障りのない質問をする。
「ええ、まぁ」と言って笑う彼に続き、奥の窓際席に座った。
「おすすめのお店って言ってたから、てっきり居酒屋かと思ってた」
足元に置かれたカゴに仕事用の鞄を置き、ポツリと本音がもれる。
「飲みたかったですか?」
瀬野くんはキョトンとし、曖昧に首を傾げた。
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