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悶々と考え込んでいると、不意に「どうしたんですか?」と尋ねられた。
「……え?」
「大野さん、さっきから眉間にシワ寄せてるから。仕事の悩みですか?」
「あ、ううん…っ」
何となく恥ずかしくなった。
それまで握りしめていたお絞りを綺麗に畳んでから戻し、とりあえず兄妹の有無から質問してみる。
瀬野くんにはお姉さんか妹さんがいるんじゃないかと思った。
「え、俺一人っ子ですよ?」
「……あ。そう、なんだ?」
「はい。……つっても、今現在はの話なんですけどね」
「え……」
どういう意味だろう、と目を瞬くと、感情が顔に出ていたらしく瀬野くんが眉を下げて笑う。
「もう十年以上昔の事なんですけどね。妹が一人居たんですよ」
妹さんが……いた?
過去形で話されるので、きっと立ち入って聞ける話じゃない。
既に亡くなっているのか、親の離婚なんかで戸籍を違えているのか。
何にせよ、他人の私が家庭の事情に首を突っ込むのは間違っている。
若干、力なく笑う彼を見るのが申し訳なくなり、私は視線を手元に落とした。
「何で俺に……女の兄妹がいると思ったんですか?」
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