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ちゅんちゅん  まだ覚めきっていない耳に入ってくるのは、鳥のさえずりと人の喋り声。  私は一人暮らしで喋り声は聞こえないはずだが…。多分隣の部屋の住人だろう。  私はベッドから降り、身支度をしようとするが、違和感を覚える。 「ここは……どこだ?」  思わずそう言ってしまった。  何故なら、第一に私の部屋はこんなに広くない。私の部屋は1LDKの1人部屋だからだ。だが、この部屋はゆうにその倍、いや、数倍はあるだろう。  そして、部屋に置いてあるものが違う。私の部屋はベッドに棚、テレビしかなかったはずなのだが、この部屋はテレビなどなく、キングサイズのベッドに棚やドレッサーが置いてある。  ほんとにここはどこなんだ。  私は、部屋に立ち鏡を見つけ、その前に立ってみた。  鏡に写っていたのは、昨日の私からは想像出来ないほどの美少女だった。  昨日の私は、黒髪ストレートに、帰宅し、着替えず寝てしまったので、スーツのままだった。そして、今の私は、金髪ロングにカールがかかっていて、いかにもなお嬢様の寝巻きを着ている。そして見た目は6、7歳程だ。  あり得ない。私の歳は確か28歳で、昨日は会社から帰ってきて、そのまま寝たはず。  いや、何か忘れてるな。そうだ、小説を読んだんだ。  そう言えば、あの小説にも、今の私のような見た目の悪役が居たな。  …まさか。  いやいや、そんな事はあり得ない。  もしそうであれば、朝はメイドが起こしに来てくれるはずだ。  私は来てくれないことを祈りながら、ベッドに横になる。  相変わらず起きた時と同様、ベッドはふかふかで、私の瞼が重くなっていくのを感じた。  私が夢であってくれと願いながら目を閉じたその時、部屋のドアがノックされた。 「お嬢様、ご起床のお時間です。」  そう、ドアの前の人が言うと、私は絶望感と少しの安心感で埋め尽くされた。  まず、見た目が違うので、元の私じゃない事は分かっていたが、まさか私が寝る前に読んでた小説の悪役令嬢になっているなんて。  しかし、これは転生と言うものなのだろうか?小説だと死んでから転生する話が多いのだが。  私が、唸っていると、一向に返事をしない私を心配したのか、ドアの前の人が部屋を開けて顔を覗かせた。 「あら、お嬢様、起きていらっしゃったのなら一言言ってくださいな。ご主人様が朝食にお呼びですよ。」 「貴女、少し部屋の前で待っていてください。」  私がそう言うと、メイドは少し戸惑ったようだったが、頷いた。  そう、まだ転生が確定したわけでは無い。なぜなら、私はまだこの姿の自分の名前を知らないからだ。  私が読んでいた小説の悪役令嬢の名前でなければ、あの小説に転生してはいないことになる。金髪美少女なんて、あの小説の中じゃ悪役令嬢ぐらいしか居なかったからな。  私はメイドに名前を聞こうと、ベッドから立ち上がり、服を少し整え、扉を開ける。  メイドは、扉の右側に一人、ビシッと綺麗に立っていた。 「待たせたわね。ひとつ聞きたい事があるのだけれど。」  私はそう言い、少し息を吸う。 「私の名前を答えてみなさい。」  私がそう言うと、メイドは、は?とゆう顔になる。  そりゃあそうなるよね。急に自分の名前知ってるか、なんて聞くんだもん。 「お、お嬢様?お嬢様は、ハーリミオン家のご長女、ハーリミオン・レクト・ラエルお嬢様でございます。」  ハーリミオン…レクト……ラエル…。  いや、嘘でしょ?まさか、私ほんとに悪役令嬢に転生しちゃった!?
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