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私が大広間に入ると、目の前には長机と言うのだろうか、ゆうに十五人程座れる机が見えた。
その一番端、まぁ、子供達で言うお誕生日席にラエルの父、ハーミリオン・レクト・トーゼムが。そして、その斜め右前の席にラエルの母、ハーミリオン・クレイン・エーリエが座っていた。
私はメイドに促されるまま、父の斜め左前の席に座る。
流石に挨拶はしとかないと怪しまれるよね。
「お父様、お母様、おはようございます。」
私がそう言うと、父と母は微笑み、おはようと返してくれた。
やっぱり、ラエルの父と母なだけあって、凄い美貌だ…。
この美貌を毎日見るとなると目が死んじゃうね、美しすぎて。
私はメイド達が運んでくる朝食を口に運びながら、そんな事を考える。
「ところで、ラエル。今日はナーグリサス家一行がくる事になっている。ラエルに限ってあり得ないが、無礼のない様にな。」
貴方って人はなに急に人が美味しい朝食を食べてる時に爆弾発言してくれるんですか。
ナーグリサス家と言えば、私達ハーミリオン家と最も良好な関係のある家じゃないか。
ちなみに、幼馴染みとはナーグリサス家のご子息、ナーグリサス・ハーリル・ミエルと言う、ラエルと同い年の子だ。
ミエルとラエルは3歳から一緒にいると小説では書いてあった。ならば、私の少しの変化でも気付かれる可能性がある。
これは慎重に行動しなければ…。
私は素早く朝食を口に運び、席を立った。
「それではお父様、お母様、私は先に部屋に戻って居ますね。」
そう、一言告げ、私は一人のメイドに、ミエルが来たら知らせて頂戴と言い、ラエルの自室に向かった。
はぁ…展開に追いつけないよ…。
と、言うかラエルの7歳の時の性格とか小説では書いてなかったから分からないんだけど…!
書いてあったのは、メイド達に嫌われ始めた9歳の時からだし、度々過去の話は出てたけど、性格まで書かれてなかったし…。
え、本当にどうしよう!?
しかも、ミエルは前世、私が悪役以外に少し推してた登場人物だ。
勿論、私は悪役だけが好きとゆう訳でもない。
普通にイケメンや、性格の良い登場人物だって推すのだ。
私は、自室の重厚感のある扉を開け、部屋に入り、ベッドに寝っ転がる。
はぁ…。
あー!!もう!なに?再推しに転生して、しかもその日に少し推してたミエルに会うとか私を殺す気!?
まぁ、こんな事考えても仕方ないか…。
流石、前世社畜だった私。理解力と適応力早いね。
「流石私ね。社畜として生きてた甲斐があったわ。今じゃ、とても美人だし、人生勝ち組ね。」
私が、自画自賛していると、不意に、扉の外から声が聞こえた。
「お嬢様、身支度を整えましょうか?」
「え、えぇ。お願いするわ。」
び、びっくりしたぁ…。
え、私の独り言聞かれてないよね?聞かれてたらめっちゃ恥ずかしいんだが。
私がその場でピシッと固まっていると、メイドは何事もない様に部屋に入ってきた。
よ、よかった…。聞かれてなさそう。
「お嬢様、ミエル様がいらすなら今日も動きやすいドレスしましょうか。」
う、動きやすいドレスなんてあるの!?
そう言ってメイドが持ってきたのは、ふわふわしたドレスではなく、大人っぽい黒のドレスだ。
肩はオフショルダーになっていて、腰周りはキュッと細く、裾は前が短く後ろは長い。オフショルダーの部分は透けていて、とてもオシャレだ。
…これ、7歳の子に着させます?
え、大人っぽすぎないかな?社畜時代の私でも着たことないけど。
まぁ、私は、メイドのキラキラとした期待の目に耐えられず、着たよ。
私、偉い。
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