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ドレスに着替えた私は、ミエルが来るまで部屋で待っている様にと、お父様からの伝言をメイドから聞き、今は大人しく椅子に座っている。
(座っているだけだと、つまんない。)
私がそう言う顔をしていたのだろう、メイドが一旦部屋を出て行き、戻ってきたと思えば、沢山のメイドを連れ、沢山の菓子や紅茶を持ってきた。
…ラエルのメイドめっちゃ使えるやん。
あっという間に私の目の前の机は沢山の菓子で埋まっていった。
マカロンにマドレーヌ、スフレやクッキー等、色々な菓子で私の部屋は甘い匂いに包まれる。
食べた事のない菓子に包まれ、私が目を輝かせていると、メイドは紅茶の茶葉が入ったガラスの容器をトレーの上に乗せ、私の目線に合わせる様に屈んだ。
「お嬢様、菓子に合わせる御紅茶をお選びくださいませ。」
「え、えぇ。」
待て、私は紅茶の種類なんて知らんぞ。
反射的に「えぇ」なんて言ってしまったさっきの自分を恨む。
私が知ってる紅茶と言えば、アールグレイしかない。
私が紅茶の茶葉を前にうんうんと唸っていると、メイドは私をちらりと見た。
「お嬢様、御決まりにならないのであれば、今日は私のお勧めにしましょうか?」
「…それが良さそうね。頼んだわ。」
私がそう言うと、メイドは少しお辞儀をして、紅茶を入れ始めた。
メイドさんマジ女神かよ。
私は、メイドが紅茶を入れる姿をじっと見つめる。
メイドはまたちらりと私を見て少し、眉を下げたが、何もなかったかの様に紅茶に視線を戻した。
「お嬢様、ディンブラとダージリンのブレンドティーでございます。」
「有り難く頂戴致しますわ。」
私の前に置かれた所々金箔であしらわれたカップを持ち上げ、口に近づけると、ふわっと紅茶のフルーティーな香りとその中にある重すぎない甘く爽やかな香りが鼻をつく。
絶対美味しいやーつ。
私は、カップの縁にそっと、唇を添えて、ゆっくりと口の中に紅茶を流し込む。
口の中で紅茶をころころと転がすと、フルーツの様な香りが口一杯に広がる。すると、続けて紅茶独自の甘みがフルーツの香りと混ざる。
こくんと飲み込むと、口の中には重くない甘さと、すーっと鼻を通り抜ける爽やかさが口の中に残る。
「…美味しい。」
「ありがとうございます。」
私が思わずそう呟くと、メイドに頭を下げられた。
慣れてないせいか、私はぴくっと少し顔を引きつらせたが、すぐに何もなかったかの様な顔に戻した。
私は、カップを置き、菓子に目を向ける。
何食べようかな?クッキー?それとも、マドレーヌがいいかな?
うーん…。まずは、ピンク色したマカロンから食べようかな?
社畜時代ですら食べたことがない色とりどりのマカロンに手を伸ばし、その一つを掴もうとしたが、マカロンを掴むことは出来なかった。
「ラエル!」
私がマカロンを掴む直前、部屋の扉を大きな音を立てて開けて入ってきたのは、ナーグリサス家のミエルだ。
私が声に吊られて扉の方を振り返ると、もうミエルは私の目の前まで来ていて、此方に駆け寄ってきたスピードまま抱きつかれた。
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