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目を輝かせ、生き生きとした様子で写真を撮っている阿澄。その被写体は——— 酷い死臭を漂わせる動物の死骸であった。死後数日経っているのか腹わたを中心に虫が蠢いている。
普段写真で見せてもらっていたもの、それが今目の前にあった。その生々しさが強烈に視界に映る。
血が滴るようなグロテスクさに思わず吐き気がこみ上げた。そんな風に体は正常な反応を見せる中、不思議と心惹かれる自分がいて驚く。目が離せない。それは動物の死骸と...生き生きとした阿澄の姿から。
上気した頬、開く瞳孔、こめかみに光る汗。それはまるで綺麗なだけの人形に血が通い人間になったような別の美しさがあった。
「...っ」
気がつけば大和は阿澄を被写体としてカメラのシャッターを切っていた。ボタンを押す手は止まらず何枚も撮っていく。
写真を撮るのにこんなに興奮したのは初めてのことだった。心臓は煩く鳴り響き体が熱くなっていく。
「いい写真、撮れましたか」
どれほどそうしていただろうか、不意に声を掛けられ大和は意識を現実に引き戻された。
シャッターを切るのをやめれば阿澄はいつもの優しい笑みを浮かべて立ち上がる。
「俺、撮られるの好きじゃないんですよね。でも...大和先輩にならいいですよ」
「阿澄、お前...っ、」
大和の視線は下がっていき、下半身にきたところで困惑して固まった。阿澄の股間は見ただけでわかる程勃起しており、ズボンを押し上げていたのだ。
その気まずさに目線を泳がせた瞬間、阿澄はこちらへ近づき背後にあった木へと大和の体を乱暴に押し付けた。
ミシリ、と木が鳴る音が背後から聞こえ胸を押されて一瞬息が詰まる。あまりの展開についていけず瞠目するばかりであった。
「ふっ、う、ぁ...っ、」
その勢いのままに顔を掴まれ、瞬き一つした時には目の前に端正な顔があった。唇には熱く柔らかいものが重なっている。
咄嗟なことで力なく開いた口の中を犯すようにして、肉厚な舌が大和の口腔を攻め立てた。
「あー、その顔やば。写真撮らせてあげたんだから大和先輩もちゃんと見返りをくださいよ。ほら、ここ、手でいいからして。先輩も男だからわかるでしょう」
幾分も艶が増し、熱の篭った瞳でこちらを見つめる阿澄は大和の手を掴み自身の下半身へともっていく。
アルコールでも煽ったように目の前がクラクラとした。この男には異常なこの状況をおかしくないと思わせる、そんな不思議な雰囲気があった。目線が、口調が、手つきが、その全てが大和を一つの行動へと導いていく。
いつもならこんな場所でこんなことはしない、ましてや男になんて。そんな意思に反して大和の手は苦しそうにしている阿澄のものへと伸ばされる。
ぼーっとした意識の中、最後に見たのは弧を描いて笑む阿澄の姿だった。
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