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可愛げのある新入生
不義理だと思いつつも背徳行為を続ける自身から目を逸らし続けてしばらく。
その日、大和は大学近くのカフェでレポートをまとめていた。ようやくひと段落したところで背を伸ばせば固まった筋肉が伸ばされ心地よさが占めていく。
「大和先輩、みっけ」
突然背後から掛けられる声。それは最近耳に馴染むほど聞き慣れたものだった。
「阿澄...珍しいな、お前が1人でいるなんて」
振り返ればコーヒーと軽食を持つ阿澄と目が合った。
いつもは集団の中心にいるのだが今は珍しく1人でいるようだ。肌寒くなった季節に合わせて羽織る大きめのブルゾン。その下から伸びる脚は外国人のように長く顔の小ささも相まってスタイルの良さを強調していた。
「外からガラス越しに先輩を見つけたんで俺だけ抜けて来ちゃいました」
「いいのかよ、友達とどっかに行く予定だったんじゃないのか」
時計を見ればまだ時刻も4時半頃を指しており外で遊ぶにはもってこいの時間であった。今日は特に阿澄からも連絡がなく麻衣子もテニサーの為いない、ということもあり近くのカフェにいたのだが...。改めて思うと阿澄とはいつも遠くのカフェで会っていたのでここで会うのは初めてのことであった。
「まぁ。でもいいんです。相席いいですか?レポートの邪魔はしないんで」
「...それは構わないけど」
そういえば阿澄は嬉しそうに大和の向かいの席に座った。湯気の立つコーヒーからはどことなく甘い匂いがする。付け加えられていた生クリームを入れ混ぜると阿澄はそれを美味そうに一口飲んだ。
「お前甘いのも飲むんだな」
「たまにゲロ甘にして飲みたくなるんですよね。そんな飲み方したらコーヒーの味わからなくなるだろってみんなに言われるのが痛いところですが」
普段遠くのカフェで会う時はいつも無糖のものをミルクなしで飲んでいた。意外に子供らしいところもあるんだな、と思わず大和の頬も緩む。
「可愛いところもあるんだな」
「可愛げがある後輩、どうです先輩」
「え、どうって...」
「はははっ、でも俺からしたら...可愛いのは先輩の方ですけどね」
その瞬間、足元をコツコツと靴の先でノックされる。思わず驚き固まれば「そういうところとか」と阿澄は目を細めて笑んだ。
「お前...———っ、」
揶揄うなよ、そう軽口を言おうとした大和の喉はヒュッと空気を詰まらせる。
「本当、初心で可愛い」
ボソリと呟く阿澄は笑みを崩さぬまま頬杖をつく。その足はいつの間にか靴を脱いでおり、大和の股間をやんわりと揉んでいた。
器用な指先はしなやかに動いては性器を刺激してくる。
「こんなところで、やめろ」
大学近くのカフェなこともあって近くの席には同じ大学の生徒ばかりが座っていた。
テーブルの下と言えど座りながら少し屈めば見えてしまうその行為をやめさせようと、大和は冷や汗を掻きながら足を掴む。
「場所が違ったらいいんですか?」
「揚げ足をとるなよ。そういうわけじゃなくて...ぁく、ぅ」
「興奮してるくせに」
掴む手を無視するかのように強くそこを擦られれば痛気持ちい感覚が脳髄に響いた。咄嗟に出る声を抑えるようにして口元を手で塞ぐ大和は俯き眉を下げる。
興奮なんてしていない。そう言い返すこともできず、突然訪れる甘い疼きを必死に抑えようとするが自分でも驚くほどにそこは硬く張り詰めていった。
― 嘘、だろ。
「ふふっ。俺が教えてあげますよ。先輩の本性」
たった数ヶ月しか付き合いがないくせに何が本性だ、俺の何を知っている。そう思いはしたが正面にいる狐のように笑む綺麗な顔を見ていれば、まるで全てを包み隠さず見られているような...そんな恐ろしさを感じた。
そうして大和のそこは刺激されるまま小さく痙攣し下着を汚した。
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