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「おう」
明るい髪の彼女に手を上げて応えると携帯を取り出した。瑞希は彼女のほうを一瞬向いて、小さく会釈をしている。
「ライン、交換しよ。都合のいい日、連絡して」
「あ、うん……」
お互いにスマホを取り出すと、軽く連絡先を交換する。昔は連絡先の交換も一苦労だったが、今は簡単で助かる。
「じゃあ、連絡して。都合つけるから」
うん、と戸惑い気味だった瑞希と手を振って別れる。遅れてきた彼女が、誰? と聞いてきた。
「学生時代の友達」
「ふうん。こんな人の多いところで、凄い偶然だね」
彼女は唇をきゅっと上げて笑い、すっと歩きだした。貴央も同じように歩き出しながら、ふと振り返って先刻の場所を見る。当然そこにはもう瑞希は居なくて、ただ、夕刻の雑踏が流れているだけだった。
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