45人が本棚に入れています
本棚に追加
サブレーの袋はデスクの上に置かれたまま動いてはいないのに、幽霊男の手には同じサブレーの袋がある。まるで袋が分裂したようだった。彼の手にある方は、若干半透明で向こうの景色が透けている。
彼はその袋を開けると中身を出してしみじみと眺めた後、おそるおそるといった様子で口に運んだ。
彼がサブレーをかじると、さくっと小気味良い小さな音がした。
そして、じっくり味わうように咀嚼する。
「ああ……うまい。やっぱ、うまいなぁ、これ……」
彼は何度も「うまいなぁ」を繰り返しながら、嬉しそうにサブレーを食べた。
最初のコメントを投稿しよう!