第46話 君に、幸あれ

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第46話 君に、幸あれ

 華奈子は、晴高を穏やかな目で見上げると静かな微笑みを(たた)える。 『晴高君』  両手を伸ばすと、彼女は晴高の頬に触れた。 『やっと会えた』  そう呟いて背伸びするように顔を近づけると、華奈子は静かに抱き着いた。 「俺も……、ずっと。ずっと、会いたかった」  呻くように応える晴高に、華奈子は愛しげな瞳をそそぐ。 『うん。ずっと会いに来てくれてるの、いつも知ってたよ。……もっといっぱい一緒にいたかったけど。私、もう逝かなくちゃ』  彼女の身体もまた、キラキラと光を放ち始めていた。成仏しかけているのだ。  華奈子は晴高から離れると、千夏と元気に向けて頭を下げる。 『ありがとう。あなたたちのおかげで、颯太君のことを助けることができました。晴高くんのことも。本当にありがとう……』  そして今度は、颯太ににっこりと笑いかける。 『颯太君、お姉ちゃん先に行っているね。颯太くんはそっちでいっぱい遊んでから来ればいいからね』  そして、華奈子は最後にもう一度晴高に向き合うと彼を指さした。 『晴高君!』  はつらつとした声で告げる。 『君に、幸あれ!』  その言葉を聞いた晴高の顔が、ハッとなった。すぐに、くしゃりと涙に歪む。 「それ、俺が卒業式の日にクラスの皆に言った言葉だろ」  華奈子はエヘヘと笑った。そして、ふわりと穏やかな笑顔になると、そのままスウッと空気に溶け込むように消えてしまった。 『大好きだよ』  そう、ぽつりと言葉を残して。  華奈子の消えた場所を見つめながら、晴高も応える。 「ああ。俺も、大好きだ」  その声が華奈子に届いたのかどうかはわからない。でも、きっと届いたと千夏は信じている。人が逝くのは一瞬だ。でも、その別れはきっと一生忘れられないものになるに違いない。  晴高はしばらく華奈子がいまいた場所を見つめていたが、腕で顔を拭った後こちらを向いた彼は、もういつものクールな彼に戻っていた。  さて、あとは颯太のことだ。 「颯太くん。このあと、どうする? 行きたいところがあるなら連れて行ってあげるけど」  千夏に聞かれて颯太は少し考えていたけれど、パッと顔をあげる。 『ボク、おうち帰りたい! パパとママと、それと妹のサヤカにも会うんだ!』
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