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あらためて彼をじっくり見ると、彼はいかにもサラリーマン然とした格好をしていた。
明るめのグレースーツに青色のネクタイ。髪は茶色みのある明るい色をしていて、少し癖があるようだ。
顔もそこそこ整っていて、イケメンと言うよりもどちらかというと愛嬌がある顔立ちをしている。
もし幽霊でなければ、好青年として年上にも可愛がられたタイプだろうなぁ。千夏はそんな想像をしてしまう。
「まだ余りあるけど……食べる?」
千夏がそう声をかけると、幽霊男はパッと嬉しそうにはにかんだ。笑った顔はちょっと可愛い。
「はい、どうぞ」
缶の中に残っていたサブレーを渡すと、彼はにこにことサブレーを受け取る。
ここでも不思議なことに、彼は確かにサブレーの袋を受け取ってその手にしっかり持っているのに、千夏の手にもまだサブレーの袋は残ったまま。
つまり、彼が物を手に取ると、まるで物の幽体部分?だけが彼の手元にうつり、そのものの実体はその場に残るようなのだ。
「ありがとう」
彼は礼をいうと、そのサブレーも袋をあけてむしゃむしゃ食べ始めた。どれだけお腹がすいていたのだろう。いや、幽霊もお腹がすくのかな?
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