第2話 視えるんです。

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 二人の間で、勝手に話が進んでいく。なんだか自分のことを言われていることは分かるのだが、話が見えなくて千夏は落ち着かない。 「……え、ちょ…………なんのことですか?」  戸惑う千夏の両肩を、百瀬課長はがっしりと掴むと、逃がさないよ?とでもいうように強い笑顔で言った。 「君には晴高くんと一緒にペアを組んで仕事をしてもらうことにしたよ。君たちの担当は、特殊物件対策班だ」 「…………はぁ」  特殊物件ってなんだ? と顔に疑問符を一杯浮べていると、大きな嘆息混じりに晴高が教えてくれた。 「別名、幽霊物件対策班。つまり、幽霊の出る物件を調査して除霊するのが俺たちの仕事だ。幽霊が出ると借り手がつかなかったり、ついてもすぐに出て行かれたりするしな」 「…………ゆ、ゆうれい…………ですか?」 「そう。この仕事は霊が視えないことには務まらない。いままで俺独りでやってたから、抱えてる物件は結構多いんだ。このあとすぐ現地調査いくぞ」 「ええ!? 今から幽霊物件の調査ですか!?」  晴高からは冗談を言っている雰囲気は微塵も感じられない。なんだか、着任早々妙なことになってしまった。  それもこれも、この幽霊男のせいだと勝手に恨みがましく幽霊男を見ると、サブレーをかじったまま申し訳なさそうにこちらを見ていた彼の視線と目が合う。  まったく、もう!
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