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千夏は小さい頃から時々、霊を見ることがあった。
「あの浮いているおばちゃん誰?」と友達に尋ねたら、変な子扱いされてからかわれたこともある。それからというもの、霊が視えることは外では言わないようにしていた。
そうやって気をつけてきたのに、今回、うっかり話しかけてしまったのは、
「え、だって。こんなにはっきり視えてるんですよ……!?」
輪郭がぼやけることも透けることもなく、生きている人間と区別がつかないほどはっきり視えていたからだ。しかも、職員席に座っているなんて、完全に騙された。
「それは、たまたまそいつと波長があったんだろう。そいつ。前からこのあたりをウロウロしている浮遊霊だ」
晴高が淡々とした口調で、さらに続ける。
「ネガティブな感情をもっていると霊と波長が合いやすくなるらしいしな。お前、八坂不動産からの異動なんだろ? おもいっきり左遷だよな。本当は、こんな子会社の出先なんて来たくなかったんだろ?」
本心を見透かしたかのような容赦ない言葉に、千夏はピキッと固まった。
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