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二人のやりとりをオロオロしながら見ていた百瀬課長が、さすがにこれ以上はまずいと思ったのか間に入ってくる。
「ふ、二人とも。それくらいに……」
しかしもう千夏には百瀬の言葉は耳に入ってはいなかった。そんな余裕なんて無い。
(そうよ。左遷よ! どうせ、私の前所属を聞いた時点でみんな薄々分かってたんでしょ!?)
千夏はキッと晴高を睨んだ。
睨んだけれど、すべて図星なので反論する言葉も浮かんでこない。
周りの同情じみた視線が痛い。なんて、無様なんだろう。泣きたい気分で涙をこらえながら、幽霊だと指摘された隣の席の男に目を向けた。
元はと言えば、あんたが紛らわしく生きてる人間と変わらない見た目をしてたからいけないのよ。と、恨みがましい視線を向けたところで、千夏は「え?」と声を漏らした。
いままでずっと微動だにせず俯いてデスクの一点を見つめていた幽霊男が、その双眸からハラハラと涙を流して静かに泣いていたのだ。
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