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昼休み、共に屋上へ向かう。二人で弁当を食べるのは、園児の時からの日課だ。
教室中の目が『上手く聞き出せよ……』との訴えを乗せ私を見ていた。皆、普段通り接してはいたが、私には動揺がまざまざと見えていた。
「で、急にどうしたの?」
正面から問うと、志真は神妙な顔をする。そうして数秒、大きく空を仰いだ。
「本来なら秘密にすることだが、美月にだけは真実を告げておこうと思う」
「……うん」
口調や仕草の半端さで、中二病の一貫であると察知する。ゆえに、真剣になるべきか迷った。
「私は生まれかわりだった」
「ん?」
――ならずとも良かったようだが。
「堕天した天使……いわゆる悪魔と化した存在の、だ」
「えー……」
遠回し過ぎて混乱しながらも、なんとか重点だけは理解する。いわゆる、自分は悪魔の生まれ変わりだったと言っているのだ。
冗談だとは分かりつつ、真剣になられては変に否定も出来なかった。それどころか、もし真実だったらどうしようとまで考えてしまっている。
幽霊や超常現象が信じられている世界だ、ない話ではないだろう。
「しかし、天界から追放された身。人間界に降りていると知られるわけにもいかず、先ほどは言い訳をした。他の者にはただの中二病患者として映っただろう」
新たな設定もどきに脳内がフリーズした。非現実を前に、思考が追い付かない。
志真は左手で右腕を掴み、その右手の平で眼帯を覆った。完全に拗らせたポーズが完成している。
「この目と腕には、悪魔の紋章があるのだ。……美月よ、隠す手伝いを要請しても?」
呆然とする頭で、昨日までの志真を思い出す。遠い目で空を見つめながら、ロボットのごとく口だけで笑った。
「……オッケーです」
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