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 返ってきた声は、今度はやけに素っ頓狂な調子だった。  ……僕はそんなに変なことを言っただろうか? 少々戸惑っていると、龍さんは(たしな)めるように、『(かける)』と静かに僕の名前を呼んだ。 『お前なあ、せっかくの卒業式だろう? 家族や大学の友達と過ごさなくていいのか? 一生に一度の機会なのに』  なんだか、至極マトモっぽいことを言われているような気がする。  龍さんってば、昔はヤンチャだったという割には、変なところで真面目なんだ。まったく、恋人が『一生に一度の良き日を一緒に過ごしたい』なんて可愛いことを言ってるのに、ちょっとぐらいキュンとときめいてくれたっていいじゃないかと思う。 「家族ったって……両親は仕事で忙しいんですよ。父親は海外だし、母親だって今時期は色々と――」 『……そうなのか』  何かを察したのか、途端に龍さんの語気がシュンと弱まる。  僕は慌てて、いじけたように尖らせていた唇をニッコリとたわませた。 「いや、あの……大学の卒業式なんて、そんなもんじゃないですか? そこは別に気にしてないんです」 『そうか?』 「そうそう。だって、そもそも式に出席しない学生だって多いくらいだし。結構テキトーなもんですよ」 『気にしてない』っていうのは、9割くらいは本当のことだ。だけど龍さんは優しいから、きっと僕が寂しがってると思って、気を使ってくれるだろう。『大丈夫だよ』と伝えたくて、僕は明るい調子で続けた。
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