183人が本棚に入れています
本棚に追加
「仲の良い友達とは、別の日に改めて会う約束してるから大丈夫。むしろ一生に一度の機会だって言うなら、龍さんにも僕の晴れ姿を見てほしいです」
『翔……』
「つっても、男の地味なスーツ姿なんて見ても、何の面白みもないだろうけど」
クスクスと笑って、再びベッドに寝転がる。
僕は近くにあった抱き枕を抱き寄せ、わざとらしく声をひそめた。
「とにかく、いいじゃないですか。たまにはこっちでデートしましょう? そんで、いつも行かないようなとこでエッチしましょうよー」
ね? と甘えるように囁いてみると、龍さんはぐっと言葉をつまらせた。呆れたのか、それとも照れているのかは分からない。
「だって僕、たまには家じゃなくて外でしてみたいもん」
『エッ、外って――』
「……その辺の公園とか、建物の裏でしようとか、そういう意味じゃないですよ。ホテルとか行きませんかーって話」
『あー……ホテルか』
なんだか随分とホッとしたような声だ。まさか、本当に僕が野外プレイをしたがってるとでも思ったのだろうか? 龍さんって、柄に似合わずちょっと天然なところがある。可笑しくて、僕はまたクスクスと笑ってしまった。
『別にオレは構わねえけど、どうしてまた急に』
「うーん、この前ネットで『おもしろラブホ特集』っての見たんですよね。それで、たまにはそういうのも悪くないかなと」
『ふむ』
「なんか、ウォータースライダーがある部屋とか、教室のセットがある部屋とか、メリーゴーランドがある部屋とかが特集されてて、面白いなって」
『ハァ? メリーゴーランド? なんだそりゃ。ヤる前に乗るのか、ヤッてから乗るのかどっちなんだよ』
「さあ……龍さんの方が人生経験豊富だから、そういうの詳しいかと思ったんですけど」
僕がそう言うと、龍さんは『そんな変なの、オレだって知らねえよ……』と小声でブツブツぼやいていた。
最初のコメントを投稿しよう!