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 手に余る孤独感や欲望を手っ取り早く鎮めたくて、僕は大学生になってから何度か、一期一会の出会いに頼った。  手や口で抜き合っただけのインスタントな初体験はそれなりに良かったけれど、興奮の波が去った後の大きな虚しさは、二日酔いで迎えた明け方の憂鬱感にも似ていた。  ゲイアプリを通じて知り合ったよく知らない男たち――嫌な奴はいなかったのは確かだけど、もうこれといった印象も残っていない。  当時はこんな風に、自然な形で出会った人とお互いを好きになり、デートしたり愛し合ったり、そういうのは自分にはありえないことだろうと思っていた。  こうやって抱きしめ合って、身体を繋げて、幸福感を感じながら最後までしたのも、実は龍さんが初めてだった。そんなことは、恥ずかしくて口には出せないけど。 「龍さんは、どうなんですか」 「ん?」 「初体験の場所」 「……」  しばしの沈黙。  僕に言わせたのだから、そっちも白状しろ――じっとりとした目で見つめていると、龍さんはいたずらっぽく笑った。 「教えない」 「えっ、うそ。ずるくないですか、それ」  僕も笑いながら肩をぽかぽか叩いたら、キスをされた。  力強い舌の動きに翻弄されて、とけそうになる。頭がぽーっとして、幸せで……このひとときが終わってしまうのが名残惜しい。  離れていく唇から、唾液が糸を引いて落ちた。
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