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「……せっかく二人共スーツ着てきたのに、脱いだのはもったいなかったかな」
龍さんは、そう呟いてニヤリと口の端を上げる。
猥雑なおしゃべりを止めるつもりはないらしい。でも、興奮が高まってきているようで、その息は上がっている。
ほんの少しだけ性急になった手の動きに半分意識を集中させながら、僕は片手でぎゅっと閉じた目元を覆っていた。
「んん……知らないですよ……夕食食べる時、また着るじゃないですか」
「じゃあその後で、今度は着たままするか」
「……」
思わず想像してしまった。
窮屈そうにネクタイと襟元を緩めて、僕を抱こうとする龍さん。
僕はきっちりネクタイを締めてるのに、ベッドの上で下だけ脱がされている。ちょっと間抜けな姿だ。ずり下がった靴下が余計に……。
妄想の中のその光景は、裸になるよりももっと恥ずかしいシチュエーションのように感じた。
「変態っ」
指の隙間から睨みつけると、龍さんは声を上げて笑った。
憎らしいほどに爽やかな顔で笑い、手のひらで額の汗を拭い、短い髪をかき上げる。その仕草はたまらなくセクシーで、なんだかもう、お手上げだった。
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