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 もしかして、『また翔が変なこと言い出した』って呆れられてるだろうか。僕はいたって真面目なのに。  むう、と口をへの字にして黙りこむ。しばしの沈黙の後、電話の向こうで龍さんがちょっとだけ笑った。 『……わかったよ。ホテルな。こっちでも色々と調べておくから』  やれやれといった風に、それでいて優しく。その言葉を聞いて、僕は思わずベッドから飛び起きた。 「本当?」 『ああ』   「やったあ」と声を弾ませると、龍さんは『何でそんなに楽しそうなんだよ?』と、不思議そうにまた笑っていた。  僕は龍さんと一緒にすることなら、なんだって楽しいんだ。龍さんは、そういうの全然解ってないみたいだけど。  その後、またしばらく雑談を続けてから通話を終えた。  枕元にそっとスマホを横たえて、仰向けに寝転がる。視線の先には見慣れた実家マンションの天井。  振り返ってみれば、僕の4年間の大学生活は山あり谷ありで、それなりに充実していたのだと思う。  色々なことがあった。  まず一番最初に思いつくのは、高校生の頃から必死にバイトして貯めたお金を元手に、憧れの大型バイクを買ったことだろう。  ゲイアプリを使って初めて男の人と遊んでみた経験は……悪くは無かったけど、正直いってあまりいい感じでもなかった。むしろ、帰り道でほんのりと苦々しい気分になったくらいだ。  大学4年の春には、交通事故にも遭った。大事にしていたバイクは廃車になるし、今はすっかり元気な身体だけど、入院生活やその後のリハビリは本当に大変だった。  ……こうして思い返してみると、『それなりに充実していた』という記憶に、若干自信が無くなってくる。  一丁前に失恋も経験したし、就職活動もうまくいかなくて、将来のことに関してはずーっと、卒業間近になった今でも親とモメっぱなしだし。  だけど、ちゃんといい思い出だってある。  それはやっぱり、大好きな歳上の恋人――龍さんと出会ったことだ。
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