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僕が龍さんと出会ったのは、2年と少し前。大学2年生の夏の頃だった。
趣味のバイクツーリングをしていた時のことだ。走行中にバイクが故障して、慌てて停車した場所が、たまたま龍さんの店の前で――今になって思えば、そんな運命的な出会いで仲が発展するなんて、漫画かドラマみたいな話だ。
龍さんは地元の漁師で、漁が終わった後は海鮮食堂も営んでいるという、根っからの逞しき海の男。
一方の僕は、都会育ちのひよっ子大学生。しかも20歳も歳が離れているのだから、傍から見ればきっと、僕たちはちっとも釣り合っていないに違いない。
僕だって最初のうちは、そう思っていた。
お互いを深く知ろうとせずに、軽い関係のままでいた方がいいと思ってた。というか、僕みたいな若造じゃ、真面目に相手してもらえるとも思っていなかった。それが今では、真剣に将来の約束までしている仲なんだから、人生何があるか分からない。
龍さんの側にいると、僕は素直になれる。楽しくて、幸せで、すごく安心するんだ。そのことに気付いたのは、いつのことだろう。
本当に、考えれば考えるほど不思議な気分になる。あの偶然の出会いからずっと、こんな風に龍さんとの縁が続いているってことが。
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