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俺は足早に病院へと向かう。
動悸が激しくなってきた。最早、走っているからだろうか。
「来週また来てください」
医師にそう告げられた時、俺はガックリ肩を落とした。
来週まで、このなんとも言えない感情を引き摺るのか……と気持ちは軽やかではなかった。
そして、今日医師からの呼び出しで 予定より1日早く病院へ行くこととなったのだ。
病院の入り口で深呼吸をし、息を整えた。
「ふぅ……」
俺のため息が聞こえたのか、受付の女性がこちらをチラリと見る。
スタスタと この個人経営の小さな病院の廊下を進む。
そして、ある部屋の前にあるベンチに腰かけようとしたその時……
「おぎゃー、おぎゃー」
か細いながらも、強い生命力を感じるその声が、病院の廊下に響き渡った。
「う、産まれた!」
俺は喜びのあまり、泣いていた。
扉が開き、助産師が笑顔で手招きする。
「お父さん、おめでとうございます」
予定日を6日過ぎ、待望の我が子が誕生した。
ようこそ、我が家へ。
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