『 醒めない夢』  

11/124
前へ
/124ページ
次へ
8.☑ ~深山康文と果歩の結婚生活 ⑤ ~     夫の暮らすコンドミニアムと呼ばれている部屋の内装や 家具はかなりグレードの高いものに見える。  洗練されている中にも東南アジアを感じさせる応接間と いったところだろうか。  全体的には茶系でまとめられている。  ウッディなローテーブルは真ん中がガラス張りになっていて 3脚ある椅子は背中部分から扇形に手を置けるところまで 繋げられており、重厚な作りになっている。  しかも、片側には少し離して別色で革張りオフホワイトの 3人掛けほどの椅子があるのだ。  すぐ後ろの壁の色が……明るめの緑とは、ちょっと 引いた。  どこかのタワーが描かれている絵まで掛けられている。  驚いた。  こんなりっぱな応接間セット、どんな客があるというのだろう。  寝に帰るだけの住宅ではないのか? なんていう思いが沸いた。  ともあれ、応接間はそれなりに調和のとれた美しい部屋だった。  会社の借り上げ物件なので、たまたま良い部屋が 当たったのかもしれない。  そしてひとたびプライベートルームに目を向けると……  夫の部屋の至る所に、その証拠と思われる残骸が残されていた。  風呂場の蓋を取って排水溝を覗いたら、長い髪の毛が何本も。  昨夜かその前か直近で風呂だかシャワーだか使って シャンプーしたであろう女の髪の毛がわんさか。  その残骸が残っていた。  だらしない女性なのだろう。  自分の洗い終えた後の、シャンプーして頭部から抜けた 残骸の処理もしないでいられるのだから。  自分の家じゃないんだよ?  恋人きどりだか愛人きどりだか知らないけどさぁ  他所様(よそさま)の家だろうに。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

505人が本棚に入れています
本棚に追加