『 醒めない夢』  

2/124
前へ
/124ページ
次へ
2.☑  私の父親は相変わらずで、家の中では言いたい放題していて 年を重ねても丸くはならず、母はいつも窮屈そうにしている。  私には3つ離れた弟がいる。  何故か、いや根っ子には男尊女卑の考えが根強くあるのかも しれなくて、とにかく私は父親からいつも厳しくて情け容赦ない 言葉を毎日毎日浴びせかけられてきた。  そして不思議なことに同じようなことを言ったりしても 弟が嫌味を言われたりすることは皆無なのだ。  毎日がそんなだったから、だんだん父親を自然と避けるように なった。  ある日も父親が帰って来た気配で、私はこそこそと 自分の部屋に逃げ込んだ。   玄関に入ってきてちょうどその様子を見られてしまった ようで父親が母親に 『なんだあいつは、ゴキブリのように こそこそと』 と発言したのが聞こえてきた。  その言葉に私は絶望し、死にたくなった。           ◇ ◇ ◇ ◇  私はあなたの娘になんて産まれてきたくはなかった。  勝手に産んだのは…子作りしたのは…あんただろう。  なのにこの仕打ち、あんまりじゃあないか。  わたしは慟哭した。  すると母親の泣き叫ぶような声が聞こえてきた。 「何言ってんのよ!  そんなふうにさせてるのは一体どこの誰なの!  果歩も祐一郎もふたりとも私たちの子供なのよ。  なんでいつもいつも果歩にはきついことばかり言うのよ。    同じにしてください。同じ扱いにしてください。  自分の娘のことをゴキブリだなんて、あんまりだわ」                        
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

517人が本棚に入れています
本棚に追加