『 醒めない夢』  

47/124
前へ
/124ページ
次へ
30.  ~深山康文と果歩の結婚生活  (27)  あぁ、私としたことが何ということ!  つい、油断してしまった。  時は夏と秋の境目、長月に入り微風はあるものの まだまだじっとりとした暑さが居座っている日のこと。  次の従業員はどんな人に決まったのかしらンなんて ちょっぴりワクワクしながら娘を連れて散歩がてら 店の様子を見に出かけたのだが。  うちのコンビニは自宅からゆっくりと娘を乗せたバギーを 押しながら徒歩で17~8分のところにある。   夫は毎日自転車で通ってる。  雨の日は自宅前のバス停からバスに乗って行く。    ほんとうに嘘のように良い立地条件でお店を出店することが できたのだ。 そんな風だから節約も兼ねてお昼は我が家で摂ることが多い。  ここ最近お昼に帰ってくることが減ってるのだが、この日 店の中ををチラ見してその原因が分かった。  店にはどう見ても10代にしか見えないヤンキー風の 女の子と夫が仕事していて、夫はやけににニヘラニヘラしている。  髪の毛は茶髪でふわふわゆるゆるパーマがかかっていて  彼女はコンビニ用の制服の前ボタンをふたつも外し、鎖骨のきれいな線が 見えるよう着崩しており、柔らかなフリルがその周りを飾り、胸元には 洒落たひと粒ペンダントネックレスのハートシェイプネックレスが見えた。  ハート型で真ん中がハート形に空洞になってるやつ。  所謂ドーナッツ型。  この一大事に……  やっと軌道に乗った仕事に……  自分の好みで選んだとしか思えないような人選に 私は激しくめまいを覚えた。  
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!

518人が本棚に入れています
本棚に追加