『 醒めない夢』  

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30-2  私は面接に参加しなかったことを後悔した。  前回は一緒に面接に立ち会い、夫と私の意見が一致して斉藤さんに 来てもらうことになったので面接に対する夫の目を信じ込んでしまっていた。  だから面接の話を全く私に振ってこなくても、まっいっかと、 私のほうから改めて確認もしてなかったのだ。   そしたらコレだ。  この(ざま)だ。  ホントに信じられない。  私たちが今どんな状況なのか夫はぜんぜん分かってない。  見るからに仕事なんか二の次のような女の子と、果たして 今まで通り上手く店を回していけるのだろうか!  私は店の前を2度3度彼らに気付かれぬよう、中を伺い 重い気持ちで家路についた。  それから何度か散歩がてら店を覗きに行った。  斉藤さんが居る日でも新人の仲間友紀がいることもあった。  どうなってるのかしら?   2人もダブルで雇えるほどの余力はないはずなのに。  そんな風にいろいろ思うところもあったけれど 結局私は夫に何も言えずにいた。  経営状況は私も必ず帳簿に目を通していたので ごまかしはきかない。  案の定、グラフは下降線の一途を辿っている。  様子見していたけれど3ヶ月連続で急降下、もうだまって なんていられなくなった。
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