15人が本棚に入れています
本棚に追加
それからが大騒動だった。
みのりさんは何とか思いとどまらせようと説得したが、陸くんは揺るがないので諦めたようだ。着替えを取りに、自宅へ戻った。
私は手早く真治の昼食を用意すると、金沢へ帰る荷物をまとめる。
心配性の義母は「大丈夫なんか?」とおろおろしている。
義父は「もう五つなんやで、行かせてみればいいやろ、なあ陸」と目を細め、どんとしている。
陸くんと真治は暢気にしゃべっている。
「大きいお風呂行くか? 動物園もあるぞ」
真治の表情は義父とよく似ていた。
みのりさんが着替えを持ってくると、陸くんはすぐに車に乗り込む。チャイルドシートは付け替えてあった。
翌日、みのりさんとご主人の孝彦さんが迎えにくることになった。
「久し振りにパパとラブラブさせてもらう」
みのりさんは、真治にはサラッと言っていたが、私には電話番号の確認をする。
「ぐずったら、いつでも電話して。もしダメなら、すぐ迎えに行くし」
眉を寄せる表情で案じているのがわかる。
「将来のための練習だと思って、預かるわ」
みのりさんがふっと笑う。
「大層なこと考えんでいいよ。親なんて子どもがだんだん親にしてってくれるんやから」
そうか。力み過ぎているかと苦笑いする。
「かやちゃーん、早くー」
陸くんに手招きされて、私も乗り込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!