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 途中で陸くんを動物園や公園に誘ってみる。 「何のために、真ちゃんとこ行くの!」  逆にいなされて、マンションに直行した。  部屋に入ると、濾過器のコポコポという音が聞こえる。陸くんは、すぐに水槽の在り処をみつける。 「うわあ! りゅう金や!」 「へえ、種類がわかるんか」 「うん。あと和金と出目金しか知らん」 「そんだけ知ってれば、上等や」  金魚は一日に一回、パラパラとエサを与えたら済んでしまう。  陸くんは食べる様子をへばりついて、飽かずに眺めている。  あまりに離れないので、真治は水槽の掃除を始める。陸くんは嬉々として手伝う。桶で待機している金魚に話しかけたり、人差し指を突っ込んだりしている。 「ねえ、金魚さん、お名前無いの?」 「名前かあ。無いなあ」  真治が名前をつけないのはなぜかわかっている。思い入れを強くしたくないのだ。  以前母に、金魚を飼っていると話した。 「生き物なんか飼うたら、それこそ子どもができんようになるんでないの」  そんなことは迷信だと思いつつ、言われると胸にチクリと刺さった。 「そんなら、りっくんがつけてあげる。赤いのがサンダー1号、黒い頭が2号、しっぽの白いのが3号!」 「おい、仮面ライダーかよ。それに金魚はしっぽって言わんのやぞ」 「いいのお!」
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