15人が本棚に入れています
本棚に追加
4
途中で陸くんを動物園や公園に誘ってみる。
「何のために、真ちゃんとこ行くの!」
逆にいなされて、マンションに直行した。
部屋に入ると、濾過器のコポコポという音が聞こえる。陸くんは、すぐに水槽の在り処をみつける。
「うわあ! りゅう金や!」
「へえ、種類がわかるんか」
「うん。あと和金と出目金しか知らん」
「そんだけ知ってれば、上等や」
金魚は一日に一回、パラパラとエサを与えたら済んでしまう。
陸くんは食べる様子をへばりついて、飽かずに眺めている。
あまりに離れないので、真治は水槽の掃除を始める。陸くんは嬉々として手伝う。桶で待機している金魚に話しかけたり、人差し指を突っ込んだりしている。
「ねえ、金魚さん、お名前無いの?」
「名前かあ。無いなあ」
真治が名前をつけないのはなぜかわかっている。思い入れを強くしたくないのだ。
以前母に、金魚を飼っていると話した。
「生き物なんか飼うたら、それこそ子どもができんようになるんでないの」
そんなことは迷信だと思いつつ、言われると胸にチクリと刺さった。
「そんなら、りっくんがつけてあげる。赤いのがサンダー1号、黒い頭が2号、しっぽの白いのが3号!」
「おい、仮面ライダーかよ。それに金魚はしっぽって言わんのやぞ」
「いいのお!」
最初のコメントを投稿しよう!