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大きいお風呂に行こうと言っていたのに、そのまま家でお風呂をわかして入ってしまった。
夕ご飯も家で食べることになった。食材が足りないので、3人で買い物に出かける。
陸くんがスーパーで見当たらなくなった話を聞いていたので、先回りして声を掛ける。
「かやちゃんのそばから離れんといてね」
陸くんも知らない所なので、勝手が違うようだ。
私の手に、するりと小さな手を滑り込ませてくるのでどきっとする。
陸くんは私を見上げてにこっと笑う。つられて、私もにゅうっと笑う。陸くんに味方と認めてもらえたようで、心が柔らかくなる。
その手はごつっとしていて、よく活動しているのがわかる。
「幼稚園で何がおもしろい?」
「うんとねー、ジャングルジムで遊ぶのが好きー。上まで登れるようになったー」
「この手でぎゅっとつかんで登るんやね」
「うん!」
友だちとたくましく飛び回る姿が目に浮かぶ。2人でつないでいる手をぶんぶんと前後に振る。そうか、子どもの目線でイメージすれば、気持ちはつながるのかと気付いた。
小さな寝息が隣から聞こえる。
思いがけず、川の字で寝ている成り行きが不思議だった。
子どもは体温が高いと言うけれど、本当だと実感する。
私は、目まぐるしかった一日を全部は振り返れなかった。隣の寝息に引きこまれるように眠りに就いたからだった。
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