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 半日いっしょにいて、陸くんと仲良くなれたつもりでいた。なのに朝まで過ごす信頼は得られなかった。  私では代わりになれない。水よりも濃い絆を思い知った。  みのりさんだってそうだ。陸くんと離れて過ごすことになった時、きっと身を千切られる思いがしただろう。  何物にも代えられない、絶対的な存在だ。  目の前の涙と汗でぐしょぐしょになった男の子は、教えられなくてもちゃんと知っている。  私は、こんな当たり前のことを見過ごしていた。  親になるということは、唯一無二の絆をつなぐことだ。  みのりさんに似た陸くんの濃い眉を指でなぞり、ふと思う。  私の子どもはどんな顔をしているかしら。  どんなふうに笑うの。  私のことを何て呼ぶかしら。  いっしょに歌を歌うかしら。  私にも……まだ可能性はあるかしら。  部屋の中が蒸し暑かった。  ドアは開けてあるので、立ち上がり窓を開ける。夜風がさらりと部屋に流れ込む。 2か所開ければ風は通る。簡単なことだった。
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