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 真治が福井の本社に戻ることになり、義父母といっしょに暮らすようになった。  心機一転して、治療は福井で病院を探した。新しくみつけたクリニックは、これまでの治療歴を考慮して、次の段階から始めてくれた。  あまり期待しないでおこうと、普段通りに過ごした。  それでも今までとは何かが違う。体の内側から浮き立つものを感じた。  風が頬を撫でていく。 「いいことがあるよ」とささやいていく。 「ねえ、やっと会えるの?」 「さあ、どうだろうね」 「お楽しみにー」 「いいことがあるよー」 「いいことがあるよー」  ほわっと柔らかい風が、私の周りをくるくると回っていた。
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