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山桃は、次の年に5粒実った。赤くなるのを待って食べてみた。柔らかい果肉だが、少しえぐみがあった。それきり生らなくなった。
山桃のことを調べてみた。雌雄異株らしい。家の木は実が生るのだから、雌の木だ。
「桃太郎やなくて、ももえちゃんやね」
冗談ぽく言ったつもりだったが、真治には、「何やそれ」と一蹴されてしまった。
調べた記述の中に『風媒花』とあった。
虫や鳥に助けてもらう草木がある中で、『風』が受粉を助けているのか。
風など、どこに吹くかわからない。何と不確かなものに頼っているのだろう。
では5粒でも生ったのは、ほとんど奇跡だ。
風が命の素まで運んでいたとは、恐れ入った。
確実に実を結ぶには、雄の木が要る。その手間暇が、不妊治療を連想させた。犬や猫は飼い主に似るというけれど、植木まで主に似るのか。実が生らない山桃のことなど、意識の隅に追いやってしまった。
そんなものに、構ってはいられなかった。
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