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翌日は真治が本社に行く日だった。仕事を終えると、食事を済ませて福井へ向かう。
真治はスポーツバッグに着替えを詰めている。
私は戸締りしようとサッシに手をかけながら、風が無いと感じる。
外から吹き込んでこなかったら、風はどこから生まれるの。
「何食べる? 先月はカレーやったっけ」
聞かれるが、食べ物など一つも頭に浮かばない。
何でも良い。いや何も食べたくない。
お腹が痛い気がするし、頭もずきずき痛い。思い始めると、体中の節々が錆びついたようにギシギシと音を立てる。
「食べたくない」
真治は手を止めて、こちらを見る。
「どっか、しんどいんか」
私は首を横に振る。そこら中が痛いと思ったのは、全部気のせいだ。
「食欲無いんやったら、このまま帰るか」
「真ちゃん、ご飯は?」
「帰れば何かあるやろ」
それは嫌だ。義母に世話をかけるぐらいなら、ここで有り合わせの物を食べてもらった方がいい。
「待って、真ちゃん。ご飯用意する」
慌てて台所に向かい、食器棚から皿を取り出した途端に手を滑らせる。ガシャーンと大きな音が響いて割れる。かけらを拾い始めると、真治が掃除機を持ってきた。
「大きいのだけにしとけ。拾うとケガする」
手早く片付けてくれる。
感情に振り回されて、コントロールできない自分が情けない。
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