15人が本棚に入れています
本棚に追加
「また何か言ってきたんか」
真治は察したようだ。
義母は、体にいいから飲むようにとサプリメントをくれたり、食べ物を持たせてくれたりする。
義母に悪気はない。善意を辛く感じる私の方が歪んでいるのではないか。
実は、この間から真治に相談しなければと思いつつ、まだ言えずにいることがあった。
「あのね、手術受けてみないかって」
「手術? 何の」
「子宮後屈を治す手術なんやって。知り合いのお嬢さんが、その手術で赤ちゃんができたらしいの。何人も上手くいってるんやって」
「そんな評判、当てになるんか? 手術って体に負担になることやぞ」
「そんなこと言われても、私だって分からないよ。それに、断れないし」
「嫌やったら、嫌やって言えばいいって。かや子は、人の言うこと、気にし過ぎや。この前も職場で、子どものことで言われたって言ってたやろ」
真治は周りから言われないのだろうか。適当にかわしているのか。
私は顔を上げる。
「でも真ちゃんだって、これで長いトンネル抜けられるかもって思わん?」
「うーん」
「受ける。私、手術受けるよ」
心の中で、ゴオーッと何かが燃えていた。内側から熱が放たれる。
周りの空気がゆらりと揺らぎ始めて対流ができ、風が起こる。
それはねっとりと、重くぬるい風だった。
最初のコメントを投稿しよう!