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私は子どもを作らないようにしているのではありません。不妊治療をしています。
欲しくても欲しくても、できないんです。
この度、手術を受けます。入院します。
だからもう、口出ししないでください。
すぐにその病院を受診し、手術を受けた。
いつも以上に期待したが妊娠はしなかった。
わかっていた。手術を受けたのはただのパフォーマンスだ。
子ども子どもと言ってくる人たちに、私だって努力しているのだと示したかった。
こんな浅はかな私のことなど、神様はお見通しなんだろうなと自嘲する。
また前の病院と同じような治療が始まった。
毎月のことに、心の方がすり切れていく。
トイレにこもって泣いていると、真治が「大丈夫か?」と、ドアをノックする。しばらく放っておいて欲しいのに、といらつく。
「ねえ何で私はだめなの? みんなが成功することできんて、私は欠陥品なんよ。真ちゃんだってそう思ってるでしょ」
「そんなこと思ってないって。なあ、2人の子どものことやぞ。1人で抱え込むな」
真治の口調がおもねるように聞こえて、なおさら胸中に嵐が吹き荒れる。
「そんなに子どもって大事? 子どもを産まんと一人前になれん? 認めてもらえん?」
「認めてもらうとか、そんなんでない。子どもがいたら、幸せやと思うからやろ」
「真ちゃんは今のままで、幸せでないん? 幸せなんて人それぞれやん。何で子どもがいないから不幸せやって決めつけられるの!」
ドアの向こうから聞こえたのは、真治のくぐもった声だった。
「かや子。治療はもうやめよう」
気持ちをぶつけられるのは真治だけだ。
だからと言って傷つけていいことにはならない。甘えているだけだ。苦い涙がこぼれた。
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