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「陸くんは、やんちゃな方なん?」
「そんなでもないけど、やっぱり男の子やしね。走り出すと止まらんし」
「ほら、この間もスーパーで、どこ行ったかわからんようになったやろ」
義母が同意する。
その陸くんが真治の腕から抜け出し、私の前に立つ。顔や髪が汗をかいてびっしょりだ。
「ああ、もう陸ったら、汗だくやん! お母さん、タオルちょうだい」
はいはいと義母がタオルを取りにいく。みのりさんが取りあえずミニタオルで頭をふきにかかると、陸くんはその手を払いのける。
「真ちゃんちの金魚、見たい! かやちゃんがいいって言ったらおいでって」
「え?」
真治を見ると、ソファに寄りかかり、にっと笑っている。何でいきなりそんな話になってるん? 決定権だけこっちに譲るって、ずるいやないの! と目で訴える。
「行ってもいい? りっくんエサあげたい」
「あ、あのね、真ちゃんちは遠いよ。エサあげに行ってたら、おうち帰るの夜になるよ」
「遠くても平気だよ。りっくん、車でいっぱいお出かけしてるもん」
救いを求めてみのりさんを見る。
「ほら、金魚やったらフィッシュランドのを見に行ったら? 真ちゃんといっしょに」
代わりのプランを出してくれる。
「いや! お店はエサあげられんもん」
陸くんはかえって意固地になってしまう。
「そんなら陸、真ちゃんちに泊まるか」
真治が提案する。
私とみのりさんが目をむいている横で、陸くんが満面の笑みを浮かべて「うん!」と返事をした。
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