夢らしい夢

3/7
前へ
/7ページ
次へ
 兄私 後ろに続く狐火ら   小声を拾えば 恋の密やか  靄に見る町の灯りは   火に非ず 月に非ずの   遠いぬくもり  私たちの列は、いつの間にか増えていました。  狐火らがポツポツと、背中を追ってくるのです。    ふわふわ揺れる幼子たちの内緒話は、見よう見まねの恋を楽しむ無害な童話。もう少し声を抑えてくれないと、お姉さんがみんなの好きな子を覚えちゃうよ?  濃い靄に包まれた林の奥に、町の明かりが見えました。目的地はあそこでしょうか。  (きり)被り 子細(しさい)とぼけるモッケ町  硫黄と下駄に 湯の(ところ)かな  随分と繁盛している町のようで、大通りは様々な妖怪が闊歩(かっぽ)していました。はぐれないよう、兄と手を繋ぎます。  引っ張る手が止まったのは一軒の旅館。ここが今夜の宿なのだそう。  お部屋に着いたら、さっそく温泉をいただきに参りました。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加